概要
タイトル:心の疲れをとる技術
著者 :下園壮太
著者が自衛隊での経験をもとに、心の疲労の元となるムリ・ムダ・ムラや、その対処法についてアドバイスをしています。
精神的に溜まっていく疲労を段階を分解して早めの対処を呼びかけています。
本書では、私が自衛隊で教えている疲労コントロールの方法を、一般の人々にもわかりやすいように、ムリ・ムダ・ムラの三つの切り口で解説してみようと思う。
ムリをして疲労がたまっているのに、それを自覚できず、止められず、深みにはまっていくメカニズムと対処法。
心のエネルギーを最も低下させる、感情のムダ遣いのメカニズムと予防法。
エネルギーの出し方にムラがあり、自分と周囲が翻弄される「うつのリハビリ期」と「新型うつ」への対処法。
さらに、長期戦を戦う「組織力」という観点からは、企業のトップやリーダーに対するアドバイスも加えておいた。
あなたやあなたの会社が、この長く厳しいメンタル戦場で、疲労することなくしっかり与えられた使命を果たしてほしい。疲れ果てている日本の社会が、心のエネルギーを取り戻し、また元気に動き出してほしい。本書が、その小さなきっかけになれば幸いだ。
(はじめに p6)
構成
1章 ムリしすぎて潰れないために
-早め、早めに疲労をとる技術
2章 感情のムダ遣いを防ぐ
-イライラや不安を取る技術
3章 ムラのある人から脱却する
-心の振れ幅を小さくする技術
おわりに
ポイント
無理の3段階
本書では、個人の「ムリ」の進行を3段階で示しています。
・第1段階:普通の過労段階
通常の疲労、一晩休め場回復する。大変な時期が終わると元の状態に戻る。
・第2段階:別人化の始まり
不眠、吐き気、めまいなどの症状が出てくる。
行動や人間関係にも異変が現れる。(飲酒等の増加、人付き合いが悪くなる)
・第3段階:別人化
心が変化する。(出来事に対するとらえ方や反応が変わってくる)
やたらに不安になったり、自信をなくす。
能力の高い人、若い人の場合はこの段階でも気づかれないこともあるが、失踪など極端な形で一気に表面化するケースもある
個人でできることとして自衛隊での経験を元に次のことをあげています。
・自分が無理をした時に起こることを考えて実際に行動が変化していないか確認する
・時間で疲労を管理する
・頑張らない自分を認める価値観を持つ
「別人化」と表現しているのにはギョッとしてしまいました。
第2段階くらいだと、体調が少し悪いくらいだと思ってしまいそうなのが恐ろしいところです。
個人では第2段階までに対策することが勝負で、第3段階になるとプロの力が必要だとアドバイスしています。
特に、自分が無理をした時にやりそうなこと、増えそうなことは考えてみると自分の疲労度を測るには役立てそうです。
「頑張ったからストレス解消にこれをしよう」といったことがいつの間にか増えていることに、気付けるかもしれません。
感情のムダ
感情は原始人から、気持ちと体を結び付けて生命を保つために、身についてきた能力です。
しかし、この気持ちと体のセットとなる反応が現代生活ではエネルギーの無駄となってしまいます。
本来「作業」するだけで必要なエネルギーが、感情が関わることで「作業」+「感情」+「我慢」+「継続」と余計な分までかかってしまいます。
特に、「怒り」「不安」「自信のなさ」「自責」などは、相互に関連して雪だるま方式で膨らんでいってしまいます。
現代人がうつになる苦しみの主体と述べています。
感情による疲労を避けるための3つのポイントをあげています。
①感情を早く鎮める
→感情のメリット、デメリットを整理しておく
感情を落ち着ける手順を考えておく(距離を置く、深呼吸するなど)
②過剰に防衛的にならない
→自分の視点だけでなく、相手の視点や宇宙視点など自問自答してみる
③自信をつける
→①、②の方法で感情をコントロールして自信をつける
感情を表現しなければいけないときは、イメージトレーニングをしたりモデルを探して参考にしてみたりする
本書では、「怒り」の感情に対応する一例を示しています。
実際に上手くやるのは難しいですが、少しずつでも感情にふり回されないようにコントロールできるようになりたいです。
②の視点については、「自分」「相手」「第三者」「時間」「宇宙」「感謝」「ユーモア」と7つもあって大変そうですが、ここまで考えられると冷静になれそうです。
ムラの原因
パフォーマンスが安定しないムラのある状態、長期的に仕事をする上で非常に厄介なものです。
ムラの対策として、次のようなことをあげています。
・休息を計画、記録する
・予備を作っておく
・ストレスの棚卸をする(3カ月、1年、10年)
・年間のストレス見積表を作っておく
きっちり休みを取っておくことと、ストレスの見積りをとっておくことが大切だとアドバイスしています。
1年のスケジュールをストレス観点から見たことはなかったので、特に参考になりました。
自分が無理しているかも分かりやすくなるのでおススメです。
感想
無理をしていると、いつの間にか別人になってしまっているという点は非常に衝撃的でした。
無理しがちな人は、早い段階で気づけるよう自分のストレスを計る基準を持つといいと思います。
ムダやムラについても精神に与える影響が大きいので、抑えられるよう感情のコントロールや休息のコツを取り入れていきたいです。
頑張りすぎてしまう方、休息があまり取れていない方にとっておすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。