概要
タイトル:キャリアの取説
幸せな人生を送るための心理学
著者 :寺崎文勝
「幸せなキャリア」に焦点を当てて、キャリアを選択・築いていく考え方をアドバイスしています。
各項目について、アドバイスの元になっている理論についても一緒に紹介しています。
この本には、「キャリア形成のポイント」「良いキャリアを手に入れるための仕事のしかた」「仕事で心が折れてしまわないようにするためのコツ」が書かれています。
全部の50項目のアドバイスは、心理学・社会学・キャリア理論をベースに、できるだけわかりやすく書いてあります。
(中略)
最後になりますが、この本は、「成功」や「勝ち負け」を気にせずに「スローで幸せなキャリア」を求めている人に読んでもらいたいと、筆者は思っています。
キャリアには成功も失敗もなく、振り返ってみれば自分が歩いてきた道がある。そんなふうに思えたら、幸せな人生が過ごせそうだとは思いませんか。
(まえがき p003-004)
構成
まえがき
第1章 なぜあなたは働くのか
第2章 「不機嫌な職場」を避ける人間関係術
第3章 「できる」人材と認めてもらう
第4章 心穏やかにビジネスライフを送るために
参考文献
ポイント
自分の価値観の知り方
良いキャリアを考える前段階として、自分が何に対して価値観を感じるかを知る必要があります。
本書では、スーパーの価値観の分類を用いて自分の価値観を知ることを薦めています。
①能力の活用 :自分のスキルや知識を発揮できるか
②達成 :最高の結果を出すとういう実感が持てるか
③美的追及 :美しいものを見いだしたり、創りだしたりできるか
④愛他性 :人の役に立てるか
⑤自立 :自分でコントロールできるか
⑥創造性 :新しいものや考えを発見したり、デザインできるか
⑦経済的報酬 :お金を稼いで、経済的に高い水準の生活ができるか
⑧ライフスタイル:自分でスケジュールし、望む生き方ができるか
⑨身体的活動 :体を動かす機会が持てるか
⑩社会的評価 :成果を周囲から認めてもらえるか
⑪危険性 :リスクを伴う、わくわくするような体験ができるか
⑫社会的交流性:ほかの人と一緒に働けるか
⑬多様性 :さまざまな仕事に従事できるか
⑭環境 :仕事をしていくのに心地よい環境か
(第1章 なぜあなたは働くのか p019-020)
この価値観を自分の大切にしたい順位に並べることで、優先すべき価値観を顕在化することができます。
自分の価値観を知ることで、望むキャリアに必要な施策を考えることもできます。
価値観と合わない方向へ進んでしまうと、一生懸命働いていてもいつまでたっても近づいていくことはないので、何か違和感を感じている方は一度見て観ることをお薦めします。
自分のできないことを知る
本書では、キャリア形成を「成長」の延長線上にあるものと捉えています。
「成長」するためにまず必要なことは、出来ないことを認識することです。
望むキャリアのために、必要な知識や能力で出来ていないことをできるようならなければいけません。
自分が何ができないかを知ることは思っているより難しく、実際にやってみたりしないと気づかないこともあります。
上司や先輩、人事に質問したりして気づきを得ることをアドバイスしています。
その時、自分が知らない・できない事実は受け入れがたいものがありますが、向き合うことで必要な行動が見えてきます。
必要な行動が分かれば、あとは実際に行動してフィードバックを繰り返す。これあるのみです。
目標設定の仕方
目標設定の仕方についても個々人の状態によって変わってきます。
成長を促す目標には「チャレンジングな目標」と「達成確率が高い目標」の2種類があります。
また、パフォーマンスが低い時には「学習目標」を薦めています。
・チャレンジングな目標:結果を目標とする、有能な人
・達成確率が高い目標 :プロセスに焦点を当てる、ベストを尽くす、普通の人
・学習目標 :プロセスを実行するためのスキルを得る、新人
この3つの目標設定を使い分けが、自分の目標設定にも人の目標設定に関わるときにも役立つと思います。
同じ人でも業務によっては、学習目標が必要になることもあるので、使いこなせば目標設定のちぐはぐを減らすことができるかもしれません。
燃え尽き症候群
一生懸命仕事に励んでいても、急に疲れ果てて意欲を失ってしまうことがあります。
「燃え尽き症候群」と呼ばれる事象ですが、目標達成した「完全燃焼」とは違い再起に時間がかかったり、最悪再起不能になってしまいます。
燃え尽きないようにするために、成功することに目標を置かないこと、あまり高い目標や崇高な目標にしないことをアドバイスしています。
目標に対して強く感情移入してしまったり、自分だけではどうしようもない目標に対して背負いすぎてしまうと反動も大きくなってしまうのかと感じました。
最初の自分の価値観も振り返って、何のためのキャリアかもときどき振り返りながらのめり見すぎないよう気をつけたいです。
感想
キャリアの形成について、理論ベースで解説しています。
趣向や性質についての分類分けが分かりやすく、自分を知るための本としても有効です。
特に、どんな価値観を持っているかは、キャリアを考える一番基礎となるところになるので知っておきたいところです。
キャリアを自分で考えろという話はされますが、考える材料として何が有効なのかを伝えてくれる機会はほとんどないと思います。
自分を知るだけでも今の立ち位置でいいか、やらなければいけないことがあるのか判断することができます。
キャリアに悩んでいる方、自分を見つめなおしたい方などにもおすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。