こゆのときどき日記

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【読書】メカニックデザイナーの仕事論

概要

タイトル:メカニックデザイナーの仕事論

      ヤッターマンガンダムを描いた職人

著者  :大河原邦男

 数々のアニメーションのメカニックデザインをされてきた大河原邦男さんが、職人として働いてきた経験を作品とともに振り返りながら、仕事への向き合い方について話してくれています。

 メカニックデザイナーという仕事ができた当時から現在まで働かれているので、どこかで必ず見知った作品があるかと思います。

 洗練されたデザインとともに語られる仕事の話はどれも魅力的です。

 私の仕事はメカニックデザイナーです。

 アニメに登場する巨大ロボットや宇宙船をはじめ、武器やネジまでありとあらゆるメカや機械を描きます。私が設定した絵を基にアニメーターたちが絵を動かしていくのです。

 1970年代に『科学忍者隊ガッチャマン』でデビューして以来、『タイムボカンシリーズ』『機動戦士ガンダム』『太陽の牙ダグラム』『装甲騎兵ボトムズ』といった作品に関わってきました。

(中略)

 この『メカニックデザイナーの仕事論』は、メカニックデザイナーになるための本ではありません。おそらく、この本を読んでもメカニックデザイナーにはなれないでしょう。むしろ、アニメ業界とは全く関係のない人が手にしてもらい、「仕事とは何か」「ものを作るとはどういうことか」などを考えるひとつの機会になってくれたら幸いです。

 本書の中には懐かしいアニメがたくさん登場します。もしかしたら、私の描いたメカに心をときめかせてくれた時代のあなたに会えるかもしれません。

(はじめに p19-222)

構成

自選メカベスト10

まえがき

第1章  偶然始まったメカニックデザイナーの仕事

第2章  私が生み出したロボットたち

     ー『機動戦士ガンダム』まで

第3章  メカニックデザイナーになるまで

第4章  私が生み出したロボットたち

     ー『機動戦士ガンダム』以降、1980年代

第5章  私の仕事論

第6章  私が生み出したロボットたち

     ー1990年代以降

第7章  人との出会い

あとがき

ポイント

メカニックデザイナーとの出会い

 大河原さんがアニメーションの仕事を始めた当時、メカを専門に描く「メカニックデザイナー」という職業はありませんでした。

 大河原さんが、メカニックデザイナーとなる初の仕事は「ガッチャマン」のアニメーションがきっかけとなっています。

 当時、背景の雲の絵を描いていた大河原さんに「メカ設定」として白羽の矢が立ちます。

 美大卒で絵が上手い人はたくさんいたそうなのですが、メカのような固いものに興味のある人はほとんどいなく、メカに興味があって変形するギミックやプロセスを好きで考えられそうなところを見込まれたようです。

 仕事としては、アニメーターが統一して描けるようにデザインしたメカの形やギミックを伝える仕事です。

 自分が描いた絵もですが、時には忙しかった上司の中村光毅さんのデザインされたものの設定を考えたりもされたそうです。

 この時の「メカ設定」の仕事が後々まで続くことになり現在の「メカニックデザイナー」の職業になっていきます。

 数々のカッコいいメカの造形はこの時の仕事無くしては見られなかったと思うと興味深いです。 

私が生み出したロボットたち

 大河原さんの生み出したメカたちが当時の仕事やプライベートを振り返りながら紹介されています。

 ガンダムタイムボカンシリーズ勇者シリーズだけでなく数々の作品と共に紹介されているので、必ずどこかに知っている作品はあります。

 立ち絵姿の挿絵も素晴らしいですが、変形ギミックが載ってたりもしてここまで考えてやっているという部分も垣間見れるのは興味深いです。

私の仕事論

 これまでの経験から自身の仕事論について4つの項目で語られています。

1.メカニックデザイナーとは?

2.デザイン論

3.職人論

4.営業論

5.メカニックデザイナー志望者に向けてのささやかなアドバイス

 アニメーションの世界に注目しがちでしたが、アニメーションとして動かして終わりでなく玩具になるところまで考えないといけない大変さがあることに気付かされます。

 カッコのいいデザインだけではなくて、スポンサーに作れる・売れると思わせなければいけない難しさがあります。

 「メカニックデザイナー」をアーティストでなく職人として捉えて仕事をされているのは、仕事への哲学が垣間見ることができて興味深いです。

 顧客まで見通して考えてる仕事の仕方について、一般的にも参考になります。

感想

 数々のメカ誕生話は、製作当時を知る面白さもあり、デザインを見る楽しみもあって満足して読み進められます。

 「メカニックデザイナー」としての仕事への向き合い方も職人として誇りを持ってされているところは、こうあったらいいなと思える姿が垣間見えます。

 ちなみに、これまでデザインした自選メカベストテンも紹介しています。

 ベスト1は「ザクⅡ」です。

 比較的自由にデザインできた敵メカで「リアル感」を出したパイプなど思い入れも込められています。

 ベストテンのを見るのも楽しいかったですね。

 ロボットが出てくるアニメーションを見たことがある方にはおすすめな一冊です。

 ご一読ありがとうございます。

www.youtube.com 2015年の「メカニックデザイナー 大河原邦男展」の様子です。

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