概要
タイトル:歴史をなぜ学ぶのか
著者 :本郷和人
日本史を通して、歴史を学ぶとはどういうことか、どんなアプローチの仕方があるのかを伝えています。
暗記からは一歩出た、どこからきて、どこへ向かっていくのかを問うことで、アイデンティティを認識したり、ものの考え方を学ぶ助けとなることを教えてくれます。
本書は、日本史における六つのターニングポイントを辿りながら、歴史を考える上で重要な論理や考え方をさまざまに散りばめるといった叙述スタイルになっています。
本書を読めば、日本史の大枠の流れをつかむことができると同時に、歴史を考えるうえで重要となる歴史的思考力を身につけることができるのではないかと思います。歴史を深く考えることの面白さを知ってもらえれば幸いです。
(はじめに p6)
構成
はじめに
第一章 歴史とは何か、日本史とは何か
第二章 日本の歴史の誕生
第三章 歴史を考えるとは
第四章 日本史の定説を疑う
第五章 想像する日本史
第六章 現代につながる日本史
終章 これからの歴史学とは
ポイント
6つのターニングポイント
日本史のターニングポイントとして6つの事件をあげています。
②平将門の乱:武士の西国に対しての最初の大反乱
③鎌倉幕府成立:武士のための政権成立
④応仁の乱:戦国時代の始まり
⑤関ヶ原の戦い:天下統一、武士の世の栄華
武家政治の始まりから終焉に関わる出来事にスポットを当てて、日本の歴史の流れをとらえていきます。
朝廷と幕府との関係を天皇を頂点とする「権門体制論」、朝廷と幕府が並び立つ「東国国家論」といった2つの理論の枠組みでみていったりと、広い視野をもつことで面白く歴史を考える機会があることを教えてくれます。
史料から史実・史像・史観の探求へ
歴史を紐解くとき、史料を基に史実を明らかにしていきます。
史実を明らかにすることは、一人前の歴史学者になる第一歩です。
史実を並び替えたり、配置することによって時代の人物や社会の史像が浮かびあげることができます。
史像は、論理構成や理論によって解釈の仕方が様々に変わります。
この事実を基にした史像の組み立ては、実社会で問題の原因を導き出し、解決するための有効なレッスンになると述べています。
そして、その先の史像のまとまりから物語としての史観を導き出していくのが歴史学者だと述べています。
歴史からの学びを得るという点では、史実から史像を読み込むことが一番の醍醐味なのかと感じました。
教科書の事実の羅列を読んでいるだけでは得られない、史像まで思い浮かべられると、歴史がもっと面白くなって、人生にも有意義になっていくと思います。
感想
武士と日本史との関りを中心に、歴史の理論や考えかたについても紹介しています。
ただ覚えるというだけでなく、史実から見えてくる史像や帰納法・演繹法を用いて、史実として残らない点と点とを結びつける面白さが、歴史を学ぶことにあると知れます。
歴史を勉強している方、勉強する意味って何だろうと思っている方にはおすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。