概要
タイトル:日本史に学ぶマネーの論理
著者:飯田泰之
日本の歴史(古代、中世、近世)の中で出てきた貨幣についてどうやって価値が認知されていったかもしくは価値がなくなっていったのかが書かれています。
「貨幣としての機能」を担ってきた、または担いうる様々な商品、債券、契約の背後にある論理は何なのだろう。
本書では歴史的な事例から、この課題への考察を試みている。歴史から経済的な知見を導き、検証することが本書の基本方針であり、経済学的な知見によって歴史を解釈することは意図していない。ごく単純化するならば、本書における「歴史」は、「通常の実証分析における数量データ」の役割を担っている。
(中略)
本書で主に議論の対象とする時代区分は、7世紀(古代律令制期)から19世紀(江戸期)である。近代の事例は対象としていない。その理由のひとつが、貨幣そのものの存在について考えるにあたっては、貨幣という存在を誰も知らない社会、かつて貨幣と認識されていたものがその地位を失う状況を掘り下げる必要性があると感じられるためだ。
(中略)
日本におけるマネーはこのいずれの方向に向かうのか、または向かうべきなのか。新しい時代を迎えた今、遠い昔を振り返りつつ、令和時代の貨幣論を考える意味は小さくないと考える。
(はじめに p③3~8)
構成
はじめに
第1章 国家にとって「貨幣」とは何か
―律令国家が目指した貨幣発行権
第2章 貨幣の基礎理論を知る
―マネーは商品か国債か
第3章 信頼できる債務者を求めて
―貯蓄への渇望が銭を求めた
第4章 幕府財政と貨幣改鋳
―日本における「貨幣」の完成
終章 改題にかえて
―歴史から考える転換期の貨幣
おわりに
参考文献
読むきっかけ
日本史×お金という面白い話題を取り上げていたので手に取りました。
飯田泰之さんの本は面白いのでちょくちょく読んでいます。
感想
日本の歴史の中で出てきた貨幣についての解説が興味深く楽しんで読めました。
私の中で興味深かったのは、貨幣の発行と政府の信用力についての記述についてです。
古代、中世でも貨幣はありましたが十分な発行量がなくデフレになり経済が停滞してしまうという流れがみられることはなんとなく知っていたりはしました。
それなら、鋳造してしまえばいいのではないか、昔はそういった経済的な知識がなかったからされていなかったと思っていました。
もしかしたらその点はあったかもしれませんが、そもそも当時(古代・中世)の政府に大量の貨幣を流通させるだけの信用力がなかったと本書では指摘していて、古代・中世の政府と近世(江戸)の政府の信用力の違いについては背景も含め勉強になりました。
日本史など興味のある方は読んでみると新しい視点での発見があると思うのでお勧めです。
ご一読ありがとうございます。