概要
タイトル:学芸員の観察日記
ミュージアムのうらがわ
著者 :滝登くらげ
わたしたちは、博物館行って様々な展示物を鑑賞することができます。
しかし、展示や保存をしている学芸員さんのお仕事について知る機会は稀です。
本書では、学芸員さんの日常のお仕事を動物のキャラクターと4コマ漫画で楽しく紹介しています。
学芸員が人前に姿を見せるのは、主に講演会やギャラリートークの時など。専門的なお話をする場所を好むようです。時々、テレビやインターネット動画でも目撃されます。しかし、それ以外の時間は、どう過ごしているのでしょう。この本では、そんな謎に満ちた学芸員の生態に迫ります。
(はじめに p3)
構成
〜プロローグ〜
1 学芸員という生き物
2 展示をつくる!
3 あつめる、しらべる、整理する
4 まもって、のこす
5 伝える、一緒に考える
6 ウィズ・マスク
外伝 学芸員の就活日記
〜エピローグ〜
あとがき
おすすめの本〜博物館のお仕事いろいろ〜
ポイント
特別展
博物館で開かれる展示には、大規模で外部からも借り入れて行う特別展と館の収蔵品を展示する常設展があります。
とある特別展を例に、スケジュールが載せられています。
一番初めの、テーマ・担当・共催者が開催の2〜5年前に決められているのには驚きました。
1年だと年間スケジュール的に短いとは思いますが、長いもので5年もかけているのには前準備の重要さが感じられます。
コロナでの中止や会期短縮はさぞかし悔しかったと思います。
ほんとに、自由に動きが取れる世の中に戻ってよかったです。
コロナ期の出来事も4コマ漫画にされています。
数々の準備がありますが、その中には図録、会場解説、講座資料作成などの調査・研究・執筆の活動があります。
スケジュール欄に項目として用意されているのですが、添えられているキャラの疲弊具合から大変さが滲み出ています。それだけに、学芸員さんの腕の見せ所なのかなと感じました。
常設展
主に、館の収蔵品を展示していることの多い常設展ですが、筆者はこちらこそ多くの人に見にきてもらいたいと述べています。
それぞれの博物館の魅力が凝縮されているのが、常設展です。
特別展と違い、あまり混んでもいないので自分のペースでゆっくり観れます。
私も常設展好きです。
各々の博物館で郷土出身だったり、ゆかりの作家さんの作品が収蔵されていたりするので、深く知っていくきっかけになったりもします。
特別展と一緒に開催されていたりもするので、いったことのない方は特別展と一緒にでも常設展観てみることおすすめします。
作品名・情報
古い作品には、名前がなかったり、統一されていなかったりされているものもあります。
そこに、名称をつけるのも学芸員さんのお仕事になります。
名称は見ただけで、作品の概要がわかるよう(図:掛け軸、図屏風:屏風、図巻:絵巻)つけられます。
ただ、形状、技法など順番など付け方が違ったりすることもあり、登場したSEさんは頭を抱えていました。
確かに、情報を仕分ける上ではSE泣かせですね。
名称とともに、収蔵品がどんなものであるか情報を与えるのも学芸員さんのお仕事です。
ただ、ものがあるだけではなく情報を与えることで博物館の収蔵品として活用できるようになります。
私たちも、学芸員さんが付けてくれた解説などの情報のおかげで、より作品を楽しむことが出来ています。
感想
学芸員さんのお仕事、普段の姿が4コマまんがで面白く描かれています。
大変さもコミカルに描かれているので、ちょっと笑ってしまいました。
学芸員といっても、絵画、工芸、考古などさまざまな専門分野の方が関わり合って仕事をしていることが分かります。
専門分野の名称から、私たちがもっている仕事の誤解についても解いてくれたりとしているので、学芸員さんのお仕事がより身近になります。
外伝として、筆者が学芸員軌跡についても描かれているので、学芸員の仕事に興味のある方は一例として参考になると思います。
博物館によく行かれる方、学芸員のお仕事に興味のある方におすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。