概要
タイトル:ダチョウはアホだが役に立つ
著者 :塚本康浩
ダチョウのアホな生き物です。
しかし、そんなダチョウには強靭な生命力が備わっていて、人の役に立ちます。
研究者である塚本先生が、アホさと人に役立つダチョウの生態について紹介してくれます。
ダチョウという巨大な鳥に立ち向かう大変さや、ダチョウの研究者になるまでの紆余曲折についても面白く語られています。
ダチョウとつきあい始めて、気がついたらもう24年目。寝ても覚めてもダチョウのことばかり考えています。おかげでついたあだ名は「ダチョウ博士」ーごっつ光栄です。
ダチョウという鳥はびっくりするくらいアホです。重傷を負っての気にしないぐらい鈍感だし、自分の家族は一瞬でわからなくなるし、どれだけ世話をしても人間の顔を覚えないし・・・・・。
(中略)
実はダチョウは、めちゃめちゃ僕らの役に立ってくれる。花粉症やアトピーをはじめ、インフルエンザやノロウイルスなど、さまざまな疾患や感染症から人間を守ってくれます。
(中略)
今、多くの人が感染症の不安のなかで暮らしていることでしょう。そんな方々に少しでもダチョウパワーを知ってもらい、日々の暮らしに役立ててもらいたい。
ついでにダチョウのアホっぷりにほんの少しでも笑ってもらえたら、こんなにうれしいことはありません。
(はじめに p003-006)
構成
はじめに
第1章 ダチョウってどんな鳥?そのすごさとアホさ
第2章 ダチョウ研究23年、その悲喜こもごも
第3章 ダチョウの抗体が秘める無限の可能性
第4章 鳥少年がダチョウ博士になるまで
第5章 新型コロナウイルスに立ち向かうダチョウパウダー
おわりに
ポイント
家族も忘れる
ダチョウは家族の見分けがついていません。
AとBの家族が喧嘩などの騒動で、一度ごっちゃまぜになると騒動が終わって群れが分かれたあとの構成員が変わっています。数もあいません。
つまり、オスもメスも親も子も区別がついていません。
アホというかおおらかというか、生存競争的に自分のコミュニティの区別くらいできるのかと思っていたので、それでいいのかって感じですね。
ダチョウのお役立ちポイント
ダチョウの特徴として、その強靭な回復力があります。
体に穴があいて骨まで見える重傷を負っても薬をスプレーすれば数日で傷がふさがり、1か月後には皮膚が再生されて元通りになります。
ダチョウの細胞は、素早く動くため自己治癒力が非常に高いです。
ここに気がついて、塚本先生が研究したところ抗体を作る能力がずば抜けて高いことが分かりました。
ダチョウは種として原始的な鳥のため、抗体を作るB細胞の構造にゆらぎ(?)があり、さまざまなパターンの抗体を作ることができます。
しかも、ダチョウは卵も大きいのでたくさんの抗体を取り出せます。
熱にも強いので、加工しやすくサプリなど応用範囲も広く考えられるそうです。
感想
ダチョウのアホな特徴、強靭なからだから作り出される抗体の有効性が面白い語り口で述べられています。
活用法もマスク、アトピー、薄毛などさまざまな試され方、商品化していて実用もされているのは研究者としても凄いのだなと感じました。
今の研究に至るまでの紆余曲折についても語られていて、一筋縄でない人生にも興味を惹かれます。
テレビなどでも取りあげられたこともありますので、ご存じの方もいらっしゃると思います。
ダチョウに興味のある方、面白い研究、人生に興味のある方にもおすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。