概要
タイトル:マルチプル・ワーカー「副業の時代」
著者 :山田英夫
早稲田大学の教授でもある著者が、副業について人生100年時代も踏まえて企業側、個人側の動きを述べています。
副業の在り方について、伏業・副業・幅業・複業と分類して副業の方向性が語られています。
本書は副業を成功させるハウツー本ではなく、次の3種類の読者を想定して書かれた。
第一には、このような(副業を批判する)発言をしがちな上司や経営者に向けて書かれた。
(中略)
第二、未だ少数かもしれないが、既に副業を始めている方に、副業のあり方や意義を再確認してもらうために本書は書かれた。
(中略)
第三に、現在は勤務先が副業禁止なので副業をしていないが、漠然とした将来への不安から、副業に関心を持ち始めた社員に向けて本書は書かれた。
(はじめに:複業とは p2-3)
本書は、「副業」(Side jobs)よりも、「複業」(Multipule jobs)に比重を置く。
(中略)
本書ではこうした「副業」よりは、本業と主従関係のない「複業」を中心に取りあげる。この複業に従事する人を、「マルチプル・ワーカー」と呼ぶことにする。
(はじめに:複業とは p3)
構成
はじめに 複業とは
Part1 なぜ今、「副業」なのか
1つの会社に人生を任せるリスク
Part2 副業の「種類」と「実態」
社外でスキルを磨く新しい働き方
Part3 「複業」を促す新しい概念
未来を生き抜く鍵は、多様性と解放性
Part4 「複業」の事例研究
人と組織はどう変わるか
Part5 「複業」の意義
会社に支配されないキャリアの選択肢
Part6 「複業」を阻害するもの
文化・制度・価値観
Part7 【提言】「マルチプル・ワーカー」
個人と企業にWin-Winを築くために
おわりに
ポイント
ケイパビリティと収入
本書では副業の分類として、「伏業」「副業」「幅業」「複業」と4つに分けています。
4つに分類する軸として「ケイパビリティ」と「収入」をあげています。
ケイパビリティ:何かを遂行できる能力
→スキル:自分自身の能力
ネットワーク:動員できる外部リソース
・伏業:収入「低」、ケイパビリティ「低」(実績の乏しい状態)
・副業:収入「高」、ケイパビリティ「低」(本業以外の仕事)
・幅業:収入「低」、ケイパビリティ「高」(専門性を公益に生かす)
・複業:収入「高」、ケイパビリティ「高」(起業する)
本書では、収入もケイパビリティも高い状態の複業について語っています。
ケイパビリティという軸を持ってきたところは注目したい点です。
自身の能力向上や外部のリソースの活用ができるとモチベーションを高く保つことができますし、自分の人生自体にいい影響も与えられると感じました。
その意味では、私の中で伏業<副業<幅業<複業といった印象を持ちました。
2軸というと収入とフロー型がストック型とかの分け方を多く見ていたので新鮮でした。
複業事例:サイボウズ
起業で複業を採用した例としてサイボウズをあげています。
複業によって、当時高かった離職率が下がるという効果をあげています。
(離職率 2005年:28%→2016年:4%)
考え方としては、「複業」によって協力者を増やしたいという想いがあり、多様な働き方の「複業」を上手く取り入れられた要因になっています。
複業解禁について他社からの質問等あったらしいですが、新興企業が多かったようです。
ニュースなどで騒ぎはしていますが、「副(複)業」が認められてできるようになるにはまだまだ遠い道のりなのかなと感じました。
感想
「副業」について、また興味深い捉え方を知ることができました。
「複業」はどちらかというと、起業する段階までいっているので事業もなかなか大きいです。
まさに表題の「multiple」っといった感じです。
ケイパビリティの要素を軸にもってきているのが、「複業」として事業をする段階では重要だと分かりました。
本書では中心の話題ではありませんが、ケイパビリティを高めた「幅業」についても興味深かったです。
副業の本もたくさんありますが、自分の軸を考えるときに参考なる一冊になると思います。
ご一読ありがとうございます。