概要
タイトル:ミュシャ パリの華、スラヴの魂
アルフォンス・ミュシャが生まれ故郷であるチェコへ帰郷してから描かれた《スラヴ叙事詩》を中心とした解説がされています。
描いた時代の背景や絵画の詳細な部分を拡大して説明が加えられています。
商業ポスターなどとはまた違った魅力について知ることができます。
ベル・エポックのパリで華々しく活躍した、アルフォンス・ミュシャ。
しかし功成り名を遂げるほどに故郷チェコへの思いを強めた彼は、50歳を前に帰郷。そこで約16年をかけて描き出したのが、スラヴ民族に捧ぐ壮大な歴史スペクタクルと呼ぶべき《スラヴ叙事詩》でした。
時代に翻弄され、今なお謎多きミュシャの芸術の到達点を、プラハでの撮り下ろし写真とともに徹底解読。
パリ時代の傑作やチェコガイドも収録し、あなたの知らないミュシャの素顔に迫ります。
(カバー袖)
構成
読み解き《スラヴ叙事詩》
《スラヴ》とは何か? 国境を超えて広がる《スラヴ叙事詩》の舞台
パリのミュシャ
チェコガイド ミュシャを追いかけてアルフォンス・ミュシャ略年譜
ポイント
絵柄の特徴
画家として大成し、生まれ故郷であるチェコに戻って描かれたのが「スラヴ叙事詩」です。
特徴としては、目を引くポイントが3点ほどあり、そこから細かい部分へと行くように工夫が凝らされています。
描かれる女性像は、ポスターを描いていた時の豊かな巻き髪をなびかせる面長の蠱惑的な女性像から、編んだ髪に丸顔の健康的な女性像に変わっています。
現地の方いわく、スラヴ的顔立ちだそうです。
布を使って空間を仕切ったり、躍動感を演出する表現は《スラヴ叙事詩》の中でも健在です。
時期的な作風の違いを知っておくと、作品を見るときの楽しみが増えます。
本書では、《スラヴ叙事詩》の絵画の中で着もするところに、注釈を入れてくれていたりもするのでミュシャの作品を見比べる時にも役立ちます。
写真の活用
《スラヴ叙事詩》では、人体のポーズなど写真を撮って描いています。
実際に、絵画と同じポーズの写真が残されています。
ミュシャは、1880年代には写真を入手していたとされ、現像もお手のものといった具合で使いこなしていたようです。
先進的な一面と同時に、描かれている絵画の大きさから、撮った写真どうしのパーツを構成していって全体を仕上げるところの凄さを感じます。
モデルは複数人のこともあり、時には近所の人も巻き込んでいたようです。
結構、人付き合いも良かったのかな、とも思いました。
感想
ミュシャの後期の作品《スラヴ叙事詩》に焦点を当てた一冊です。
20点の作品について、ページに大きく1枚絵、拡大絵に解説と楽しくみれますし、役立つ参考書にもなります。
絵画の紹介の後には、雑学的な話も載っていたりとこちらも面白いです。
「本人公認素材集」など自分の手の内を明かしているなど非常に興味深かったです。
ミュシャの絵に興味のある方、絵画を見る機会のある方にとってもおすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。