こゆのときどき日記

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「帳簿の世界史」を読んで

概要

タイトル:帳簿の世界史

著者:ジェイコブ・ソール

訳者:村井章子

 南カリフォルニア大学の教授であるジェイコブ・ソール氏が、ルイ十四世が年に二回、自分の収入・支出・資産が記入された帳簿を受け取っていながらも、やがてその習慣を打ち切り、フランスを破綻させてい待ったという事実から始めた「帳簿の世界史」の研究を元に書かれています。

未来の資産価値を現在に置き換える帳簿が生まれたとき、世界が変わった

アダム・スミスカール・マルクスマックス・ウェーバー……。

彼らが口を揃えて主張していた「帳簿」の力とは、いったい何なのか。

これまでの歴史家たちが見逃してきた「帳簿の世界史」を、会計と歴史のプロフェッショナルが、初めて紐解く。

(表紙裏)

構成

序章   ルイ十六世はなぜ断頭台へ送られたのか

第1章  帳簿はいかにして生まれたのか

第2章  イタリア商人の「富と罰」

第3章  新プラトン主義に敗れたメディチ家

第4章  「太陽の沈まぬ国」が沈むとき

第5章  オランダ黄金時代を作った複式簿記

第6章  ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問

第7章  英国宰相ウォルポールの裏金工作

第8章  会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち

第9章  フランス絶対王政を丸裸にした財務長官

第10章 会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち

第11章 鉄道が生んだ公認会計士

第12章 『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性

第13章 大恐慌リーマン・ショックはなぜ防げなかったのか

終章   経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている

謝辞

ソースノート

日本版特別付録 帳簿の日本史(編集部)

 読むきっかけ

 最近、歴史+お金関係の本が面白く興味があり、 以前読んだ「会計の世界史」や「日本史に学ぶマネーの論理」も面白かったためで手に取りました。

koyux.hatenablog.com

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 感想

 歴史的に帳簿が付け始められたローマ皇帝アウグストゥスの話から現代にいたるまでの帳簿の歴史が語られています。

 古代から使われていた単式簿記からイタリアで発明された複式簿記への移り変わり。

 会計知識を利用して繁栄したイタリア、オランダ、フランスが会計の運用をうまく継続できず衰退する様子がドラマティックに述べられています。

 また、鉄道という巨大な資本を持つ企業に対応するように誕生した「公認会計士」についても語られています。

 読んでみると、帳簿を付けることで正確な収支を認識することができ、そのことが国家や企業の繁栄・衰退につながっていることに面白みが感じられます。

 会計が正しく運営されることの難しさも述べられており、歴史的に数多くの帳簿が改ざんされていたことも知ることができ驚きました。

 本書でたどってきた数々の例から何か学べることがあるとすれば、会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する、ということである。ルネサンス期のイタリアの都市ジェノバフィレンツェ。黄金時代のオランダ。十八世紀から十九世紀にかけてのイギリスとアメリカ。本書で取り上げたこれからの社会では、会計が教育に取り入れられ、宗教うあ倫理思想に根付き、芸術や哲学や政治思想にも反映されていた。

(終章 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている p334)

  ご一読ありがとうございます。