概要
タイトル:日本イラストレーション史
編 :日本美術手帖
1950年代から現在(出版2010年)までの日本のイラストレーション史について語られています。
数々のアーティストたちの登場や日本でも技術、技法の始まりなどを知ることができます。
時代の空気を色濃く反映し、大衆メディアとともに歩んできたイラストレーション。
消費され、ある時期が過ぎれば消えていくものであるからか、草創期から現代までの歴史を通覧して語られる機会はあまりなかった。
また、広告やエディトリアルといったメディアと不可分であることから、イラストレーションだけを切り離して語ることの困難さもそこにはあったはずだ。
そしてなにより海外からきたこの言葉の定義の解釈が、イラストレーター個々で違うということが、範囲を定めず広がり続ける世界が生成されていったゆえんではないだろうか。
だからこそ、いま再び、イラストレーションとは何かを見つめ直すことからはじめたい。
時代ごとにあげたキーワードと、そして、11名のイラストレーターの証言をもとに、時代時代の表現を紡ぎ、そこから立ち現れる歴史に目を向けていこう。
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構成
はじめに
PART1 イラストレーションという概念が定着していった時代
PART2 メディアにのって、大量のイメージがあふれ出す
PART3 イラストレーションがメディアを越境、アートの意味が分裂する
PART4 イラストレーションはどこへ向かおうとしてるのか?
ポイント
イラストレーションとは
本書の冒頭で、イラストレーションというものについて考察しています。
なぜ、イラストレーションが娯楽作品の一つとして人々の意識に登ってきたのか?
日本にもともとあった、挿絵や装丁、図解、風刺漫画などはありました。元々あったそれらと違う異質な何かにイラストレーションと名前が付けられます。
イラストレーションに新しいジャンルを感じ、イラストレーターという職業にも注目が当たります。
イラストレーターは、さまざまな価値観や独自の技術を持って作品を作り上げていきます。
業界誌やコンペ、受注などが成立していく中で、イラストレーションとは、イラストレーターが描く個性的な作品であるというイメージが定着しています。
山口はるみ
日本のエアブラシでのイラストレーションの先駆者です。
エアブラシで描かれるスーパーリアルな表現は、後のアーティストたちに多大な影響を与えています。
PARCOの広告のデザインもされていたので、ご存知の方も多いかもしれません。
山口さんのデザイナーになるまでの道のり、PARCOの創業との関わり合い方などのエピソードも語られていて興味深い内容になっています。
美術館でも時々開催されているスーパーリアル系のデザインの根本について知れて勉強になりました。
キャラクター
本書では、ジャンルを設けてカテゴライズした作家さんの紹介もしています。
キャラクターは見たことあるけど、子供の頃だから知らなかった作家さんとが合致したりして再発見の場になります。
原田治さんの展示会は先日行ったので、出てこられてちょっと嬉しかったです。
絵本
イラストレーターが表現を行う舞台として、絵本もあります。
そういえば、絵本もここ60年くらいで出てきたものです。
私たちが持っているある程度共通イメージは最近作られたものということは改めて気付かされました。
絵巻物など、絵と一緒に語る物語は昔からありますが、広く多くの人に浸透することができたのは現代ならではですね。
感想
日本のイラストレーション史で活躍している人、ジャンルなどが掲載されています。
何気なく、ポスターやCMで見ていて存じ上げていなかった作家さんを知るいい機会になりました。
ちょっとだけでも、自分の見識が広がった気がします。
また、自分が展示会などで見に行ったことある作家さんが紹介されていたりすると嬉しいですね。
イラストレーションの歩みが知りたい方、自分の知らない作家さんを方にとっておすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。