概要
タイトル:馬の世界史
著者 :本村凌二
人と関わりの深い動物の一種である「馬」。
戦車、騎馬、そしてスポーツを通して、人類と共に歩んできた歴史について語られています。
馬とめぐりあったおかげで、おそらく人間の文明は、数百年、あるいは数千年も、速く進展しただろう。それが人間にとって幸運だったのかは不運だったのかは、わからない。これほど関わってきただ動物なのに、そのことを確認する努力はきわめて少ない。
馬と世界史の関わりとは。あるいは、馬は世界史をどのように変えたのか。その問いが、本書をつらぬく主旋律である。
(プロローグ p7)
構成
プロローグ もし馬がいなかったら、二十一世紀はまだ古代だった
1章 人類の友
2章 馬と文明世界 ー 戦車の誕生
3章 ユーラシアの騎馬遊牧民と世界帝国
4章 ポセイドンの変身 ー 古代地中海世界の近代性
5章 馬駆ける中央ユーラシア
6章 アラブ馬とイスラム世界
7章 ヨーロッパ中世世界と馬
8章 モンゴル帝国とユーラシアの動揺
9章 火砲と海の時代 ー 近代世界における馬
10章 馬とスポーツ
エピローグ われわれは歴史の負債を返済しただろうか
あとがき
参考文献
ポイント
人に飼い慣らされる条件
数ある動物の中でも、人間が家畜とできた動物は多くはありません。
馬は人間に適用する条件を備えていました。
①どこにでもあるような食料でやっていける
馬は、他の動物との生存競争を避けるため、果物や草木の葉のような高質な食糧がある森林地帯ではなく、草原地帯を生息の拠点として選びました。
丈夫な歯と顎、盲腸の機能によってセルロースを分解、吸収することで雑草しかない草原地帯でも食糧を得ることができます。
②人間に好まれる性格である
進化の過程で他の動物との競争を避けるした馬は、攻撃的でなく争いをすることも少ない。
角や牙を持たず、逃走するしかないので周囲に対し注意深くなり、知的になり、好奇心も強くなりました。
①、②の要素があって、馬が人間と近しい存在として歴史を歩んでいくことになります。
速さ
馬を騎乗する、戦車などを轢かせることによって人類が手に入れたものがあります。
「速さ」です。
人類史の舞台に、馬と戦車が登場する様になるとこれまでにない速度で移動することが可能になります。
馬を利用することで、より遠くの地域との交流も可能となりました。
ユーラシア大陸での騎馬遊牧民の活動に馬は欠かせませんし、この大移動がないと歴史の動きも全く違ったものになっていたと思います。
世界史を語る上でも馬の果たした役割は大きいです。
感想
馬と世界の関わりについて知ることができます。
人類の活動領域を広げるために馬は欠かせない動物でした。
世界史の興亡を速度という面で支えてくれていることを感じることができます。
馬がいなければ、二十一世紀はまだ古代だったという本書の語りもあながち言い過ぎでないのかと思います。
世界史に興味のある方、馬と人との関わりについて興味のある方などにおすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。