こゆのときどき日記

美術館・読書・その他いろいろ。。。

当ブログでは一部記事にアフィリエイト広告等を利用しています

【読書】見るだけで楽しめる!ニセモノ図鑑

概要

タイトル:見るだけで楽しめる!ニセモノ図鑑

     贋造と模倣からみた文化史

著者  :西谷大

 2015年に国立歴史民俗博物館で開催された企画展「大ニセモノ博覧会ー贋造と模倣の文化史!」を書籍として再構成しています。

 ホンモノに価値があるほど、ニセモノもあり。

 本書では、そんなニセモノたちの紹介をしています。

 書や掛け軸の紹介だけでなく、さらには人魚の作り方まで載っています。

 ニセモノにも語るところあり、そんな一冊です。

 現代の“ニセモノ”は実に多様である。言葉だけをとりあげても、フェイク、イミテーション、コピー、レプリカ、とさまざまであり、正直いって正確に分類することさえ難しい。それだけ私たちの生活のなかに、実はニセモノは「文化」として、また「歴史」として深く根付いているということであろう。

 この、ニセモノの持つ「文化」や「歴史」の側面を掘り下げていくのが、本書の狙いでもある。

(中略)

 本書によって、企画展や図録とはまた異なる視点から、「ニセモノ」と「ホンモノ」との複雑な関係性が、時代や社会背景によって、どのような原理で振幅し、そして創造され需要されてきたかを理解していただければ幸いである。

(はじめに p6-7)

構成

はじめに

第1章 ニセモノとおもてなし

第2章 なぜ偽文書は作られたのか?

第3章 パクリがパロディか

第4章 ニセモノを創造する

第5章 ニセモノから学ぶ

おわりに

主要参考文献

執筆者紹介

ポイント

ニセモノの種類

 一言ニセモノといっても、指す言葉にはいろいろあります。

 本書では、下記のように区分けされています。

・フェイク(偽文書、贋作、偽造、偽物)

 年代や制作者を偽り、鑑賞者、収集家、世間一般の人びとを欺くことを目的とする制作およびその作品。

・イミテーション(模倣、擬態、模造品)

 本来は、古代人の自然対象のとらえ方を習得することを目的としており、一定の表現力および技術力を達成し、過去の芸術作品を自らのものとして理解しなおすことを目的とする、一種の方法概念。

 現在では、模造品、偽造品、ニセモノ、擬態の意味も含むようになっている。

・コピー(複製、模作、模刻)

 オリジナルの芸術家あるいは弟子の直接の介在なしに制作された芸術作品に適用されている。

 しかし、語の意味するところが、文化の継承、技術の習得というよりは、物が物を写す行為に適用することが多いため、「模倣」とは分けて考えられている。

・レプリカ(復元品、写し、模型)

 本来は、「オリジナルの制作者自身によって作られたコピー(複製品)」。現在では、コピー一般に対しても用いられる。

 博物館で、展示用にレプリカを作成したり、制作過程を研究したりもする。

 

 ニセモノといっても、いろんな言葉の差し方があります。

 本来の意味から、時代を経るごとに意味が変わっていったりもしている言葉もあります。

 ニセモノでも、研究のためだったり、技術を継承するためだったりの役割を持っているものもあります。ホンモノ対ニセモノの対立軸だけでないところは面白いです。

 博物館でも展示名に()書きで、レプリカなど書いていることもあるので、注意深く見てみようかと思います。

縄文時代からあったニセモノ

 ニセモノといっても、イミテーションの部類に当たりますが、縄文時代からあったようです。

 本書では、貝を模した土製品の腕輪などのイミテーションが紹介されています。

 貝が手に入りにくい内陸部の人びとが、代用品として使用していました。

 ホンモノは、ベンケイガイ、イモガイ、オオツタノハなどが使用されています。

 ニセモノの写真も掲載されていますが、土で作っているので見るからに重そうです。身につけるのは大変だったのかな感じます。

ニセモノの作り方

 表紙に載っている「人魚のミイラ」、そして「小判」のレプリカの作り方について紹介されれいます。

 人魚のミイラは、作り方が文献などで残っていないために、X線CTなどで内部を観察した結果を元に再現して実際に復元して作っていっています。

 上半身の「猿」と下半身の「鮭」を組み合わせて作っていますが、がっつり加工しているのでなかなかグロテスクな事しています。(説明はイラストなので大丈夫)

 当時の人は、なぜこんなことをわざわざしたのかとも思いました。

 

 小判の方は、行程順ごとに、インゴットや小判を載せているので分かりやすいです。

 竹流台→棹金→延金→荒切金→打替小判→茣蓙目→色付

 各工程を経て、仕上がっていきます。

 最後の色付けで、表面の銀を飛ばして綺麗な金色にしているところはよく知らなかったので勉強になりました。(だから焼いている)

感想

 日本国内の「ニセモノ」がボリュームタップリに紹介されています。

 一言に「ニセモノ」といっても、フェイク、イミテーション、コピー、レプリカなど様々で一様には語れない奥深さもあります。

 人魚のミイラをわざわざ作ったという力の入れ方には恐れ入りました。

 展示を直接見れなかったのは残念です。今でもどこかで展示されたりしているのかな。

 真贋判断のポイントやニセモノが出てきた歴史なども語られていて、ニセモノにも地域性などがあったりと、そちらも興味深いです。

 美術品に興味のある方、歴史に興味のある方にとってもおすすめな一冊です。

 ご一読ありがとうございます。

 

www.rekihaku.ac.jp