概要
タイトル:おもちゃ流企画術
著者 :大澤孝
こども、時には大人もわくわくさせてくれるおもちゃ。
おもちゃを作り出すときの発想について本書では述べられています。
ニーズからではなく、感情に焦点を当てて企画を導き出すおもちゃ流の発想方法で新しい視点を取り入れることができます。
私は20年以上、おもちゃメーカーのタカラトミーでおもちゃづくりに携わってきました。そして、毎日のようにアイディアを出しては新しいおもちゃのことを考えてきました。
(中略)
このような経歴の中で、よく受けてきた質問があります。
それは
「どうしたら、そんなアイデアが生まれるのですが?」
というもの。
「アイデアを生み出す」というと、ゼロからつくり出すような、突然、神が降臨してアイデアを授けてくれるような、ものすごいひらめきをイメージするかもしれませんね。
でも、ひらめきに頼ってしまうと、アイデアを出すのは本当に大変です。いつひらめくかもわからないのに、アイデアを提案する会議は容赦なくやってくるからです。
ひらめきに頼らずアイデアを発想する方法はないか?少しでも楽にシステマティックに発想できないか?と日々考えていました。
そうして生み出したのが「おもちゃ流企画術」です。
(はじめに p2-3)
構成
はじめに
第1章 「おもちゃ流」とは
第2章 おもちゃ流をつくる「プラスの感情」
第3章 おもちゃ流アイディア術
第4章 ヒット商品から新商品を生み出すおもちゃ流アイディア術
第5章 アイディアを「企画」
おわりに
ポイント
情緒的価値とプラスの感情
商品やサービスの価値として、本書では2つ述べられています。
性能や価格など「機能的価値」とプラスの価値を生み出す「情緒的価値」です。
性能・価格の機能的価値を高める場合、顧客の感じる価値はどこかで頭打ちになってしまいます。
そこで、別ベクトルである情緒的価値のある商品を生み出すことが求められてきます。
情緒的価値を生み出すプラスの感情について著者の経験から6つの感情をあげています。
1.興奮 :ワクワクする、期待、好奇心(瞬間的)
→対戦玩具、パズル
2.喜び :笑顔、快感、満足感(瞬間的)
→ジョークグッズ、面白い着ぐるみ
3.感動 :心打たれる、胸にこみ上げる(持続的)
→おもちゃ単体では難しい
4.安らぎ:癒される、リラックスする(持続的)
→むいぐるみ、会話ロボット
5.好き :愛情、萌え、推し(持続的)
→フィギュア、プラモデル
6.驚き :緊張感、ハラハラ、ドキドキ(瞬間的)
→ヨーヨー、けん玉
機能的価値が飽和しつつある現在、情緒的価値に目を向けてみるのは良く聞く話ですが、おもちゃは元々情緒的価値に重点をおいて製品づくりをしています。
感情にもいろいろあって、どの感情に焦点を当てたおもちゃなのかを見てみるのも面白いと思います。
そして、自分の関わっている商品やサービスが与えてる感情を読み取れると、仕事の中で情緒的価値を加えていけるかもしれません。
おもちゃ流アイデア術
おもちゃのアイデアを考える公式として、
<人>誰に×<感情>どのようなプラスの感情×<カテゴリー>商品・サービス
の組み合わせを述べています。
組み合わせの属性を変えていくことで、様々なアイデアを生み出していきます。
思い浮かべるヒントとしては、自分自身、自分が話を聞ける相手、自分と一番属性の遠い人などアドバイスしています。
漠然とアイデアを考えるより、この3つの組み合わせから考えていく方がずっと考えやすくなります。
アイデアを出すようにと言われて困って知ったときは、ここから考えてみようと思います。
企画に落とし込む
出したアイデアを実現させるための計画が企画になります。
企画にする場合、多くの考慮すべき要因がありますが、本書ではコストに注目して述べられています。
コストカットのアイデア術の例として猫っぽいぬいぐるみ「ミャウエバー」をあげており、このぬいぐるみにはかおも鳴き声もついていません。
商品として、猫の持つ「癒し」に注目した結果上記のような商品としています。
大胆な発想ですが、癒しという感情に着目して実現性を突き詰めた結果として参考になる一例だと感じました。
感想
感情面から目を向けた、おもちゃを企画する際の発想方法を知ることができます。
人×感情×カテゴリーの3つの組み合わせでアイデアを考える方法は、アイデアを出す際のとっかかりとして役立つと思います。
世の中便利になって、機能的価値の差別化が難しくなっているのでおもちゃから発想を得るのは別視点も得られていいと思います。
ミャウエバーの大胆なコストカット法は、ここまでできるのかと感心してしましました。
おもちゃの企画に興味のある方、アイデアの考え方に興味のある方におすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。