概要
タイトル :図書・図書館史
此処に無知終わり、「知」始まる
著者 :原田安啓
監修 :志保田務
高鷲忠美
古今東西の図書館の歴史について述べられています。
古くは、資料が残っているメソポタミア・古代エジプトからギリシア・ローマ、中世の難を逃れて、イスラムを経てヨーロッパ・アメリカへ続いていく歴史を知ることができます。
また、東洋の図書館の歴史として、古代中国・日本の図書館や日本の近現代の図書館についても述べられています。
本書では図書館活動と、これが育んできた「知」の連続性の上に、私たちの現在があるとの視点を持ち、注意深く読んでいただくことによって、より図書館に愛着を感じていただければ幸いです。
(図書の歴史を学ぶにあたって p4)
構成
序言
図書の歴史を学ぶにあたって
Ⅰ 知の誕生 文字の発明と図書館
Ⅱ 知の進化と保存 ギリシアローマの図書館
Ⅲ 知は東方へ 中世の図書館
Ⅳ 知は再び東方へ 西洋の図書館出現前夜
Ⅴ もう一つの知 東洋の図書館
Ⅵ 近代ヨーロッパの図書館
Ⅶ 現代ヨーロッパの図書館
Ⅷ アメリカの図書館(1)
Ⅸ アメリカの図書館(2)
Ⅹ 日本の図書館 近世・近代
Ⅺ 黎明期日本の図書館から現代まで
Ⅻ 図書館の再生 ー 現代日本の図書館
ポイント
図書館の始まり
図書館の条件は、資料の扱いが組織的で目録が存在していることです。
世界最初の図書館はアッシリアの首都ニネベに出現しました。
粘土板の製作もおこなっており、ジャンルも「数学」「天文学」「占星術」など整理されていたようです。
図書館で本(当時は粘土板ですが)の作成から保管までになっていたのは興味深かったです。
記述様式も洗練されていたようで、現代の研究者の解析にも役立っていて古代の図書館から今に続くものがあったのだなと感じました。
中世の図書館
古代に発生した図書館文化はギリシア・ローマに受け継がれていきますが、中世ヨーロッパでは図書館がなくなってしまいます。
ヨーロッパで図書館文化が断絶していた期間、図書館の書物や文化をどこが担っていたかというと、東方のイスラム文化圏です。
一般人を含む多くの人々が利用でき、講義や議論の場などを提供していたことによって、今に至る知識の伝搬が途絶えることがありませんでした。
しかしながら、イスラムで発展してきた図書館文化も十字軍の遠征によって衰退していきます。
イスラム圏からもたらされた図書館文化は、ルネサンス以降のヨーロッパで図書館文化が再興、近現代の図書館へと続いていきます。
古代日本、図書館事業の創始者は聖徳太子?
古代日本に影響を与えた仏教文化ですが、文化の流入とともに書物も数多く伝来してきます。
伝来した書物は仏教研究の学問寺として建立された法隆寺にも数多く収蔵されていたと考えられています。
図書の収蔵を図書館の発生とするならば、聖徳太子が日本における図書館事業の創始者とみなさないといけないと述べています。
聖徳太子が日本図書館の創始者と考えると、少しロマンを感じます。
感想
古今東西の図書館の歴史を知れます。
今日に続く時代の流れの中で、文化の断絶を回避するのにイスラム文化圏の果たした役割が大きかった事を知りました。
当たり前と思っている知識なども、一度途絶えてしまうと取り返しのつかなくなることは恐ろしい事です。
今の文明を享受できている先人の努力に感謝ですね。
本や図書館、歴史に興味のある方におすすめの一冊だと思います。
ご一読ありがとうございます。