概要
タイトル:なぜ銅の剣までしか売らないんですか?
著者:エフ
キャリアコンサルタントとして学生の就職支援活動を行っているFさんが執筆された小説で令和小説大賞の選考委員特別賞を受賞しています。
RPGの世界で青年商人・マルがある目的を果たすために冒険する物語です。
「魔王討伐の勇者一行が最初に立ち寄る町では、なぜ≪銅の剣≫までしか売らないのか」?
もっといい武器も防具もあるじゃないか。
なんで最初からそれを売らないんだよ……。優秀な商人見習いとして、そのシステムに疑問を抱いてしまった青年・マル。
彼は自分の弟が、選出されたら二度と生きて帰れないとされる魔王討伐の≪勇者≫に選ばれてしまったことから、この非効率的なルールを改正しようと商人ギルドの本部に直談判すべく旅に出る。
ところが行く先々で目の当たりにしたのは、(どこか現代日本でも見かけるような)えぐい社会の構図と、それに翻弄される民の姿ばかり。
そして、長く困難な旅路の果てに、ついに到達した目的地では、衝撃的な真実を突きつけられて……!?
構成
1 不自由っていやだな
2 仮想の花
3 損した奴の自己責任
4 怒りひとつ、一ゴールド
5 好きなことでは生きていけない
6 夢の労働力
7 誰かのために踊る人たち
8 善悪の境界線
9 右の頬を叩かれたら、相手の鼻を潰せ
10 負け犬ってなんで負け犬なの
11 お前は死ぬときまで他人任せなの
12 勇者の存在意義
13 自由っていいな
感想
RPGの世界観の中で物語が進んでいくのですが、私たちもどこかで知っている現実とリンクしているところが面白いところだと感じました。
頭の中で物語登場人物のセリフや心情と合わせて、自分の中でリンクした現実の出来事を考えると物語に入り込んだ楽しみ方と一歩話の外側から楽しみ方の両方を味わえるのでお勧めです。
私が特に印象に残っている章は
「好きなことでは生きていけない」
「おまえ死ぬときまで他人任せなの?」
の章でとても面白く私の心のライフもゼロになりそうでした。
物語の本筋でもある、始めの街で「なぜ銅の剣までしか売らないんですか?」の謎も冒険の最後には解き明かされています。
純粋に物語だけでも楽しめますし、物語の背景も自分なりに解釈しながら読んで楽しむこともできますのでお勧めの一冊です。
ご一読ありがとうございます。
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