こゆの読書と美術の備忘録

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【読書】残酷な進化論

概要

タイトル:残酷な進化論

著者  :更科功

 生物は、それぞれの環境に適応するように進化しています。

 しかしながら、適応するにも道筋や時間がかかるため完璧な生物というものは存在しません。

 生物が進化の中で獲得してきた体の構造や機能が、メリットやデメリットを比較しながら語られています。

私たちヒトは進化の頂点でもないし、進化の終着点でもない。私たちは進化の途中にいるだけで、その意味では他のすべての生物と変わらない。

それに、いくら進化したって、環境にぴったりと適応する境地には辿り着けない。

環境に完全に適応した生物とういうのは、理想というか空想の産物であって、そんな生物はいない。……ヒトって、大したことはないのだ。

オンリー・ワンではあるけれど、ナンバー・ワンではないのだ。

だから、ヒトという種が偉いと思っている人には、ある意味、進化というのは残酷なのかもしれない。

( カバー袖)

構成

はじめに

序章   なぜ私たちは生きているのか

第1部 ヒトは進化の頂点ではない

 第1章  心臓病になるように進化した

 第2章  鳥類や恐竜の肺には敵わない

 第3章  腎臓・尿と「存在の偉大な連鎖」

 第4章  ヒトと腸内細菌の微妙な関係

 第5章  いまも胃腸は進化している

 第6章  人の眼はどれくらい「設計ミス」か

第2部 人類はいかにヒトになったのか

 第7章  腰痛は人類の宿命だけれど

 第8章  ヒトはチンパンジーより「原始的」か

 第9章  自然淘汰と直立二足歩行

 第10章 人類が難産になった理由とは

 第11章 生存闘争か、絶滅か

 第12章 一夫一妻制は絶対ではない

 終章   なぜ私たちは死ぬのか

おわりに

ポイント

迷走神経

 進化の道筋の例として、キリンの迷走神経が取り上げられています。

 生き物が喉の筋肉を動かすために、迷走神経というものが脳→心臓下→喉へと伸びています。

 心臓の血管の下側を神経が通っているため、どうしても一旦心臓の下を経由しなければなりません。

 首の長いキリンともなると、脳から喉までの迷走神経の長さは約6mとずいぶん遠回りしてしまいます。

 頭から喉までの最短経路を取るよう進化できなかったのかと考えますが、進化では切ってつなげたり、分解してから組み立てることはできません。

 進化は前からあった構造を修正することしかできない面白さを表した一例として興味深かったです。

大人になってもミルクを飲めるのも進化

 成長するとミルクを飲まなかった人類ですが、およそ1万年前にヤギ、ヒツジ、ウシの家畜化が始まると、栄養価の高いミルクを成長しても飲めるよう適用した個体が増えていきます。

 これは、ミルクに含まれるラクトースを消化する酵素ラクターゼが成長してもなくならないためです。

 ラクターゼ活性持続症と呼ばれています。

 表面には表れていませんが、今も私たちの体の中で進化は続いていると考えられる身近な例で興味深いです。

感想

 進化の道筋について興味深く読める一冊です。

 進化では、元ある構造から一気に切ったり繋げたりするような、一足飛びの変化は起こせません。

 その結果、環境に適用する変化によっておかしな構造が残っていたりするところにもどかしさや興味深さを感じました。

 進化の歴史に興味のある方、生き物の体の構造に興味のある方にとっておすすめな一冊です。

 ご一読ありがとうございます。