概要
タイトル:ロジカルティーチング
著者 :阿部淳一郎
新しく入った人に対して、大切に育てていこう。とうい思いは大切です。
しかし、それだけではなかなか上手くいかなかったり、自身の経験バイアス偏った指導になってしまったりする恐れがあります。
本書での理論や実情を知っておくことで、人の育成という答えのない難問により良く対応する助になります。
「イノベーション」「グローバル」「次世代リーダーシップ」「企業(アントレプレナーシップ)」「圧倒的成長」といったキーワードが当てはまる成長意欲の高い若者たち。こういったタイプとは異なる「イマドキのガツガツしていない若者たち」をどうやってうまく育てるかを、精神論や一個人の経験談ではなく、「ロジカルなアプローチ」でお伝えすることが、本書のテーマです。
(はじめに p2)
構成
第1章 若者を育てることになったらはじめに認識しておきたい基本スタンス
第2章 「イマドキの若者」の仕事観を知る
第3章 育成に役立つヒトの心理メカニズム
第4章 ジェネレーションギャップを超えて信頼関係をつくるには?
第5章 自分のさじ加減に頼らない相手の能力に合わせた業務の任せ方
第6章 「イマイチ伝わらない」から脱却する教え方・褒め方
第7章 振り返りを意味のある時間にするための手法
第8章 「感情的なシコリを残すだけ」にならない意味のある叱り方
おわりに
ポイント
自己効力感
「主体性の発揮」を持って欲しいということは、教える側にとっての課題の一つです。
主体性を持てるようになる原動力として、「自己効力感」があります。
いわゆる「できそう感」ではありますが、現在と過去に基づいた4つの軸と対応を述べています。
▶︎成功体験(過去) :成功体験を積んできたか?
→達成感と成功体験を積み上げさせる
▶︎代理体験(過去) :周囲にいる人たちから吸収してきたか?
→他人の良いところを取り入れる手助けを行う
▶︎言語的説得(過去) :良いところを指摘されてきたか?
→良いところを指摘し続ける
▶︎生理的情動的喚起(現在):「心身ともに調子良く働ける」状態か?
→「心身ともに調子良く働ける」環境を整える
誰でも経験のないところから、いきなり自ら進んでできることはありません。
主体性を発揮しろ!ではなく、主体性が発揮できる経験と環境を作ってあげることが大切です。
これが逆になってしまうと、「学習性無力感」になって主体性どころの話ではなくなってしまいます。
調子良く働くためにも必要なことだと思います。
建設的な振り返り ペンドルトンルール
振り返りの際のアプローチとして、ダメ出しをしてしまったり、教える側が一方的に話してしまうのは意欲を高めるためには逆効果です。
本書では、振り返りの場を建設的にするために「ダメ出し」ではなく「良い出し」をすることを薦めています。
流れとして
1:確認→話題を決める
2:良かった点→褒める
3:改善点→もっとできたら良かった点など話してもらう。(褒めながら)
4:行動計画→学習したこと、今後変えて行く行動を話し合う(必要に応じて補足)
5:おさらい
本人の口から話してもうことを意識して進めていきます。
このアプローチを「ペンドルトンルール」といいます。
「ダメ出し」ではなく「良い出し」です。
褒められる方が人間気分もいいですし、萎縮させないためにも心がけていきたいです。
過去に触れないアプローチ フィードフォワード
振り返りは、必ずその課題を「次に活かせる行動」に着地させる必要があります。
振り返りの手法として、「過去」に焦点を当てて上手くいかなかった理由を考え行動を促す「フィードバック」の手法もあります。
ただ、フィードバックの場合、相手が萎縮してしまい「反省に着地」してしまう傾向が強いです。
一方、「フィードフォワード」は、未来と解決策に焦点を当てます。
「今後どうするか?」という点のみを掘り下げることで萎縮することを防ぎ、アイデア出しができます。
「フィードバック」「フィードフォワード」組み合わせて行うことで効果的な振り返りにもなります。
振り返りの場は、意見が停滞したり、雰囲気が暗くなってしまうことも多いです。 「フィードフォワード」のようなアプローチを知っておくことは、時間を作って設けた場を活かす一助になります。
感想
人に何かを教えることは難しいです。
ましてや主体性を持ってもらおうと思ったら、一筋縄ではいきません。
本書では、具体的な教える際の説明文や順序などを理論と合わせて解説しているので理解が進みやすいです。
主体性の原動力は、「自己効力感」(できそう感)ですが、相手と関わっていくなかで上手に自己効力感を高められる接し方を出来るようになりたいです。
「良い点」に視点をおいた振り返りが特に重要だと感じました。
人に教える機会が多い方、人の教育などを任されたが困っている方にとってもおすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。