概要
タイトル:アイテムで読み解く西洋名画
著者 :佐藤晃子
西洋絵画の中に出てくる、動植物や道具などのもつ意味について一つ一つ解説しています。
特に、近現代以前の宗教画などには、文字が読めない人でも理解できるように約束事として決まったアイテムが描かれています。
アイテムの意味を知ることで、絵画に対しての理解度を深めることができます。
その昔、文字が読めない多くの民衆は、イエス・キリストや洗礼者ヨハネを描いた宗教画を見て、聖書の内容を理解していました。ですから、教会に飾ってある宗教画は、目でみて、だいたいの内容が理解できるものでなければなりません。「イエスがどこにいるのかわからない」「描かれている人がだれだかわからない」では、宗教画の役割を果たしていないので困るのです。
そうした事情から、「〇〇を持っている人は⬜︎⬜︎ですよ」という、絵を描くうえでの約束事が生まれました。
(中略)
「鳩とともに描かれる人はだれなのか?」
「薔薇を手にした女性はだれなのか?」
こうしたちょっとした約束事を知るだけでも、絵をみることは楽しくなります。慣れてくれば、美術館で絵を見ても、解説プレートを読む前に、何が描かれているのかだいたいの見当がつくはずです。本書が、一歩進んだ絵画鑑賞の一助になれば幸いです。
(はじめに p3-6 )
構成
はじめに
食物
動物
肉体
ポイント
花
植物の中でも、絵画に色鮮やかさを与えてくれる花々ですが、花によっても色々な意味合いを持っています。
・百合:純潔、権力
・薔薇:美しさ、儚さ
・葡萄:犠牲、陶酔
などを絵画とともに紹介しています。
百合などは、フランス王家の紋章として使われていたこともあり、権力の象徴としての描かれ方もしています。そのため、ライバル関係にある所属の画家が百合を避けるという歴史的な背景が影響している絵画もあります。
描かれる人物とともに、周りの花々が絵画の訴えを強める役割や歴史的な背景も知ることができます。
空想上の動物
絵画の中に現れる動物には、実際に存在しない空想上の生き物が描かれることもあります。
ドラゴン、ユニコーンなどにもそれぞれ意味が持たされて描かれています。
ドラゴン:悪、異教徒
ドラゴンは、古来雨や水を操る神獣として描かれていましたが、ラテン語のドラゴン(draco)が蛇の意味を持っていたため、キリスト教では混同して邪悪なシンボルとして描かれるようになります。
小道具
本書の静物の中では、描かれる様々な小道具のもつ意味についても教えてくれます。
杖:聖人の持ち物
本:知性
鏡:真実、虚しさ
鍵:権力、秘め事
矢:愛、疫病
人の傍に描いてあるのを見るだけでも意味が分かってくるので、知っていると鑑賞に深みを与えてくれると思います。
感想
西洋絵画、特にキリスト教絵画を鑑賞する上での決まり事を知ることができる本です。
誰なのか、どんなことを表現しているかを読み解くために、人物の周りに描かれているものの知識が重要です。
描かれている人物にばかり注目しまいがちなので、もっと周りに描かれているものにも注目したいと思いました。
同じ意味を持つ違うものがあったりもするので、なかなかに奥深そうです。
西洋絵画を鑑賞し始めた方、もっとよく知りたい方などにもおすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。