概要
タイトル:この絵、どこがすごいの?
著者 :佐藤晃子
数々ある名画について、絵画の中の注目ポイントや時代背景、作者について5,6ページで分かりやすく解説しています。
西洋は、16世紀ルネサンスから20世紀近代の印象派、フォービスムまで、日本は、12世紀の平安時代絵巻物から19世紀の江戸時代の作品について語られています。
読むことで、名画の凄さをより知ることができます。
この本では、「名画」とよばれる有名な作品を集め、それぞれに解説を加えました。いまは忘れられてしまった、絵を見るために必要な約束だけでなく、画家のプロフィールも載せていますので、興味のあるページからみていただいてかまいません。
また、本書では、美術の歴史のなかで新しいページを切り開いた、ターニングポイントとなる作品を中心に集めています。名画と呼ばれ、人から大切に守られてきた作品には、それまでに描かれた絵と違う、斬新さや優れた点が必ずあるものです。それらを知れば、なぜその絵が歴史のなかで埋もれず、現在にいたるまで伝えられてきたのか、その理由が浮かび上がってくるはずです。
本書が、楽しい絵画鑑賞の一助になれば幸いです。
(はじめに p003)
構成
はじめに
西洋絵画篇
ルネサンスの時代>>15~16世紀
バロックの時代 >>17~18世紀
変革の時代 >>19~20世紀
日本絵画篇
平安~桃山時代 >>12~16世紀
江戸時代 >>17~19世紀
ポイント
ヴィーナス誕生
ボッティチェリの名画です。本書の表紙にもなっています。
ヴィーナスのポーズは、古代の彫刻からある定番のポーズですが、ヴィーナスの誕生のヴィーナスは髪が長くアレンジされています。
ボッティチェリが、ヴィーナスの誕生を描いたのは30代後半から40代初めにかけてです。
ヴィーナス誕生のときは明るい作風だったボッティチェリですが、パトロンの交代によってその作風を捨てます。
19世紀後半に再評価されて、フィレンツェ・ルネサンスの代表的画家として今も知られることになります。
モナ・リザ
レオナルド・ダ・ヴィンチの誰もが一度は見たことはあるであろう有名な絵です。
特徴はスフマートという、輪郭を描かない技法です。
輪郭線をはっきりさせないことで、神秘的な微笑みが生み出されています。
同時代の作家も影響を受けたようで、ラファエロは「マッダレーナ・ドーニの肖像」といったそっくりな構図の絵画を残しています。
ダヴィンチは、絵画を描くのが非常に遅く、画家として残した完成品は現存20点ほどと少ないです。
そのため、有名ですが知っている作品は非常に少ない作家となっています。
慧可断臂図
雪舟が描いた、洞窟で面壁九年の座禅をする達磨に一人の僧侶が入門を請う図です。
太い線やリアルに描かれた顔が特徴で、力強さを感じます。
雪舟はこの時77歳でこの大作を仕上げています。
前年には「私は老いて目も気力も衰えてしまい、どうやって絵をかけばよいのかわからないが・・・」と残していますが、明らかな謙遜というのが分かってしまうのが面白い所でもあります。
風神雷神図屏風
俵屋宗達作の風神・雷神図ですが、元々千手観音の従者とされていた風神・雷神をはじめて主役として描かれています。
当時、通常火や炎に縁があり赤く描かれていた雷神を白で描いたところにも、当時としては画期的な特徴があります。
一説には、風神の緑、雷神の白には、2神を釈迦如来の脇侍である、文殊・普賢菩薩として見立てたのではないかと言われています。
後世にも影響があり、尾形光琳や酒井芳一によって風神・雷神図が模写されています。
感想
絵自体の注目点もさることながら、時代背景、作者などにも触れられているので、名画について一通りのことを知ることができます。
なかなかお目にかかれる機会はないかもしれませんが、展覧会で作品と出会う時に前もって見ておくと楽しみが一つ、二つと増えると思います。
絵画の見方に興味のある方や、これから観に行くから前もって知っておきたいなといった方にもおすすめな一冊です。
ご一読ありがとうございます。