こゆの読書と美術の備忘録

美術館・読書・その他気になったことも備忘録的に残しています

当ブログでは一部記事にアフィリエイト広告等を利用しています

【読書】ヘンな科学

概要

タイトル:ヘンな科学

著者  :五十嵐杏南

 世の中のヘンな研究がたくさん集まる「イグノーベル賞」。

 笑えるものだったり、痛そうなものだったり様々な研究が受賞されています。

 本書では、イグノーベル賞を受賞した様々な面白い研究やどうしてその研究をするに至ったかのアプローチも含めて楽しめます。

 研究のテーマだけを聞いていては分からない、意外な活用法なども添えられて気楽に楽しく読んでいけます。

 本書では、イグノーベル賞受賞研究の中でも、比較的最近のものに焦点を当てて紹介している。時には真面目に「へぇ」と思える話をしつつ、時には個人的なぼやきも交え、若干意識低めなタッチで書いた。ゆるい気持ちでお読みいただければ何よりだ。

 日本人受賞者の功績も多めにピックアップしているが、あまり日本で話題にならなかった面白研究にもぜひご注目を。

 

 笑った後は、何を考えさえられるかは読者のみなさん次第。さあ、自由すぎる研究の世界へようこそ!

(はじめに p007)

構成

はじめに 

Part1  いつか何かの役に立つ!?

Part2  風変わりな大発見

Part3  生き物の不思議な生態

Part4  研究者はやってみた

Part5  極めてピュアな好奇心

おわりに

参考文献

ポイント

昇進させる従業員はランダムで選ぶと良い

 2010年の経済学賞を受賞した研究です。

 ピーターの法則をから生じる疑問を研究対象としています。

ピーターの法則(ピーターのほうそく、: Peter Principle)とは組織構成員の労働に関する社会学法則

  1. 能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。したがって、有能な平(ひら)構成員は、無能な中間管理職になる。
  2. 時が経つにつれて、人間はみな出世していく。無能な平構成員は、そのまま平構成員の地位に落ち着く。また、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は、無能な人間で埋め尽くされる。
  3. その組織の仕事は、まだ出世の余地のある人間によって遂行される。

ピーターの法則 - Wikipedia

 このピーターの法則が真実なら、どのような基準で従業員を出世させていけばよいのかについて、シミュレーションを行っています。

 会社はヒラから社長まで6段階のピラミッド構造で、評価段階は10段階です。

 シミュレーション内容は昇格3パターンを基準に常識版説とピーター仮説を掛け合わせています。

・一番優秀な人を昇格させる   ・有能な人は出世しても有能(常識版説)

・一番無能な人を昇格させる × 

・ランダムで昇格させる     ・出世前後で能力は異なる(ピーター説)

 常識版説では優秀な人を昇格させる。

 ピーター説では、無能な人を昇格させる。といった結果を得られています。

 しかし、会社が常識版説型かピーター説型かはわからないので、研究者はランダムに昇格させるということを勧めています。

 ランダムだとどちらの型の会社でもほどほどに良い結果を得られたと報告しています。

 通常会社は、有能な人は出世しても有能という考えの常識版説で動いていると思います。

 ピーター説は、他人事だと笑っていられますが、ほんとにやり出したら大変なことになるのは確実ですね。

 おすすめのランダム昇格ですが、これって年功序列のことかと感じました。

 実は、そこそこの成果を上げるには年功序列は有効かもしれません。

 それですめば、良いんですけどね~

迷子のフンコロガシは天の川を見る

 2013年の生物学賞、天文学賞を受賞した研究です。

 この研究が発表されるまで、フンコロガシは月や太陽を頼りに進むと考えられており、月や太陽が出ていない時はあまり動かないと考えられていました。

 しかし、ある月の出ていない夜にフンコロガシが出ていない夜にフンコロガシがまっすぐ進んでいるのに気づきその時出ていた天の川から閃いて研究を進めたそうです。

 この研究では、フンコロガシ用の帽子を使って天の川の光を遮ったり、プラネタリウムの天の川でまっすぐ進むのか研究しています。

 ちなみに、プラネタリウムの天の川は効果ありです。

 天の川を目印にフンを転がしているっていうのは、ロマンチックな情景と面白さが加わって印象に残ります。

 フンコロガシの方は、そんなこと関係なく必死にフンを運んでるんでしょうが。

 この研究は、移動する他の動物にも参考になるとのことなので、意外と拡張性も高い研究なのだなと思いました。

34年間欠かさずに食事の写真を撮り続けた

 2005年の栄養学賞を受賞した研究です。

 こちらは、食事が頭脳や体調に与える影響を分析するために34年間にわたり欠かさず食事の写真を撮り続けています。

 研究者は、数々の発明品を生み出しているドクター中松氏です。

 34年前というと、まだまだフィルムカメラ全盛、今では良く見かけるようなSNSの食事をアップロードするような流行りもないです。

 食事の雰囲気を壊す、レシピ泥棒ではないかといった逆風もあったりするなか、続けてきたことはすごいです。

 そんな頃から食事の写真を撮っているということは、食事写真のストック数は日本一、もしかしたら世界一かもしれません。

 和食は体にいいということと、現代版和食と75年代和食では75年代和食の方が痩せやすいなど、興味深い結果も残されています。

 探したら、ドクター中松ショップなるものがあって、そこに食事が紹介されていました。

 興味のある方はご参考ください。

dr-nakamats.com

ネコは液体か?

 2017年の物理学賞を受賞した研究です。

 結論は、ネコは状況によっては個体とも言えるし、液体とも言い切れる、と主張しています。

 この研究では「緩和時間」という概念を用いて個体と液体の定義づけを行っています。

緩和時間:物質が変形するまでにかかる時間

     短い→液体

     長い→個体

 時間の定義づけのさじ加減にはなってしまいますが面白い研究だと感じました。

 (定義次第では、水滴でも固体のような性質を持つといえる)

 ネコの「液体的」な動画とかもありますが、確かに液体だ!

と思ってしまうところにこの研究の魅力があります。

www.youtube.com

 感想

 本書では、イグノーベル賞を受賞した数々の研究が紹介されています。

 どの研究も面白くて興味深いものです。

 時々ニュースで紹介されるだけは分からない、一見役に立たないかと思ってしまうことでも、別視点からでは有用性があったりするということも教えてくれます。

 雑学的な一面もあるので、面白い研究で楽しい気分になりたい方、いつもと違った視点の知識を知りたい方などおすすめな一冊になると思います。

 ご一読ありがとうございます。