概要
タイトル:まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう
語り :オードリー・タン
執筆 :近藤弥生子
台湾のデジタル担当大臣である、オードリー・タンさんが人と人を繋ぐデジタル化を進めていくことで、どういった未来にしたいかということが語られています。
台湾での政策に導入されている実例も紹介されています。
デジタル化を進めていく上でのオープンな状態のもつ重要性など現実社会での出来事を交えて知ることができます。
日本で語られているちょっと遠いDXやSDGsに関わる話も、現実的なものとして読むことができます。
本書では、私が考える未来についてお話をさせていただきました。
デジタルで世界はどう変わっていくか、皆が参加できる社会とはどういうものかなど、できる限り皆さんの参考になるように努めたつもりです。
本書を読むことで、一人でも多くの方が未来に希望を持てるようになり、私たちと一緒にこれからの世界を創ってくれる方が生まれたらうれしいです。
(はじめにー日本の皆さんへ p4-5)
構成
はじめに ー 日本の皆さんへ
第1章 デジタルで世界はどう変わっていくか
第2章 これからの「社会」の形を考える
第3章 世界と私たちの未来
第4章 これからの未来を創る皆さんへ
ポイント
人と人をつなぐ
本書でのデジタルは「その先に人がいること」を意味しています。
対して、ITは「機械と機械をつなぐもの」を意味しています。
台湾の社会でデジタル化を進めていく中で、技術と人の関わり方が非常に意識されているのが分かります。
台湾で推進している「オープンガバメント(開かれた政府)」では、4段階で行政からの情報発信が進められています。
1.政府の資料やデータを開放する
「オープンデータ」
2.開放された後に何か意見がないか問いかける
「市民参加」
3.それらに政府が回答する
「説明責任」
4.”3段階目で誰かのことを忘れていないか”を探す
「インクルージョン」
デジタル化を活かして、情報をオープンにすること、相互の意見交流できるようにすることで民間側が情報を得られるようになっただけでなく、行政側も何度も重複して同じ回答をすることがなくなり多くのメリットを得られています。
その他にも、台湾で実現されているデジタル化の実例が紹介されていますが、技術の
先に人がいることが意識されることを感じられます。
デジタル化への素養
デジタル化など、新しい技術が出てきた際に、社会の多様性を尊重しながらどうやって受け入れていけばいいのか?
そこには、「素養」が大切になってくると述べています。
素養とは、普段の生活の中で培った教養やスキル、たしなみといったものです。
素養がなければ、新しい技術へ拒否反応を起こしてしまったり、悪意や偏見から身を守ることはできません。
日本でのデジタル化の進まなさの一端は、この「教養」によるところが大きいと感じました。
教養のなさからくる、導入コストの高さ、使用する際の不要なハードル、なんだかよく見かけていた情景がよぎってしまいました。
社畜であることに、何か問題はありますか?
最終章には、日本からの悩みに、オードリーさんが答えています。
その中で、面白いものがあったので留めておきます。
このままずっと、社畜でいそうな自分ってどうでしょう?
という質問に対して
「社畜であることに、何か問題はありますか?」と回答しています。
社畜といった言葉を使うとき、2つの意味があり
・自分はこのポジションに居続けたいわけではない
・もっと価値のあることを探したい
こういった願いが隠れていて、変化の第一歩であるととらえています。
「社畜だ」と考えたことは、変化へのチャンスと述べています。
「社畜」というと、働きづめといったイメージですが、どちらかというとポジションや価値観に依存するほうが大きいのかなと思いました。
あとはどうするかですが、どうするかは難しくとも、社畜という言葉の中の思いを浮き上がらせてみるだけでも心持が変わってくると思います。
それにしても、「社畜」は台湾でもよく使われるようです。
すごい言葉を生み出していますね。
感想
コロナ時の「マスクマップ」などで取り上げられて、オードリー・タンさんをご存じの方も多いかと思います。
ただ、実際の台湾の行政で行われているデジタル化については、なかなか知る機会はないと思いますので、非常に面白かったです。
技術導入の際には、オープンさ、相互交流といったところが非常に大切にされていることが分かりました。
デジタル化などを上手に運用していく方法を確立しているので、デジタル化とかってどうなのと普段感じている人でも実感をもってとらえることができます。
デジタル化の将来ってどうなるんだろう、どうしていくのが良いんだろうと感じている方にはおすすめな一冊だと思います。
ご一読ありがとうございます。