概要
タイトル:サピエンス全史
著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
訳者:柴田裕之
人類の歴史について、なぜ我々ホモ・サピエンスのみが生き残ったのか、文明がどのように発展してきたのか述べられています。
一筋縄ではいかない人類の歩みを読み解いていくことができます。
アフリカでほそぼそと暮らしていたホモ・サピエンスが、食物連鎖の頂点に立ち、文明を築いたのはなぜか。
その答えを解く鍵は「虚構」にある。
我々が当たり前のように信じている国家や国民、企業や法律、さらには人権や平等といった考えまでもが虚構であり、虚構こそが見知らぬ人同士が協力することを可能にしたのだ。
やがて人類は農耕を始めたが、農業革命は狩猟採集社会よりも過酷な生活を人類に敷いた、史上最大の詐欺だった。
そして歴史は統一へと向かう。その原動力の一つが、究極の虚構であり、最も効率的な相互信頼制度である貨幣だった。
なぜ我々はこのような世界に生きているのかを読み解く、記念碑的名著!
(上巻 表紙裏)
近代に至って、なぜ文明は爆発的な進歩を遂げ、ヨーロッパは世界の覇権を握ったのか?その答えは「帝国、化学、資本」のフィードバック・ループにあった。帝国に支援された科学技術の発展にともなって、「未来は現在より豊かになる」という、将来への信頼が生まれ、起業や投資を加速させる「拡大するパイ」という、資本主義の魔法がもたらされたのだ。人類史全体をたどることで、我々はどのような存在なのかを明らかにする、かつてないスケールの大著!(下巻 表紙裏)
構成
上巻
第1部 認知革命
第1章 唯一生き延びた人類種
第2章 虚構が協力を可能にした
第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
第4章 史上最も危険な種
第2部 農業革命
第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
第6章 神話による社会の拡大
第7章 書記体系の発明
第8章 想像上のヒエラルキーと差別
第3部 人類の統一
第9章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
第10章 神話による社会の拡大
第11章 書記体系の発明
下巻
第3部 人類の統一
第12章 宗教という超人間的秩序
第13章 歴史の必然と謎めいた選択
第4部 科学革命
第14章 無知の発見と近代科学の成立
第15章 科学と帝国の融合
第16章 拡大するパイという資本主義のマジック
第17章 産業の推進力
第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和
第19章 文明は人間を幸福にしたのか
第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ
感想
人類史全体について知ることができます。
私が特に興味深かったのは、
第1部「認知革命」の数ある人類の中で「ホモ・サピエンス」が生き残ったのか
第2部「農業革命」の実は狩猟採集の生活の方が豊かだった
という点です。
現存している私たちが他の人類と違っている点に「虚構」つまり「架空の物事について語ることができる」ようになったことがあります。
今、形のない価値観を信じることで他の動物には見られない巨大な組織を形成することができるようになりました。
そのことで、他のサピエンスを数の力で圧倒することができ生き残ってこれたと語られています。
伝説や神話、神々、宗教は、認知革命に伴って初めて現れた。それまでも、「気をつけろ!ライオンだ!」と言える動物や人類種は多くいた。だがホモ・サピエンスは認知革命のおかげで、「ライオンはわが部族の守護霊だ」と言う能力を獲得した。虚構、すなわち架空の事物について語るこの能力こそが、サピエンスの言語の特徴として異彩を放っている。
(中略)
言葉を使って想像上の現実を生み出す能力のおかげで、大勢の見知らぬ人どうしが効果的に協力できるようになった。だが、その恩恵はそれにとどまらなかった。人間どうしの大規模な協力は神話に基づいているので、人々の協力の仕方は、その神話を変えること、つまり別の物語を語ることによって、変更可能なのだ。適切な条件下では、神話はあっという間に現実を変えることができる。
(第1部 認知革命 p36-50)
「農業革命」とういと、農業生産により安定的に大量の食糧を栽培することができるようになった人類の進歩というイメージを持っていました。
確かに、たくさんの人を養うという点では大量に生産できる農作物が有効でしたが、個人としては狩猟採集のときに比べ食べられる種類も少なく摂取できるカロリーも少なくなってしまいました。
農業は個人にも恩恵が大きかったのかと思っていたので意外です。
農業革命は、安楽に暮らせる新しい時代の到来を告げるにはほど遠く、農耕民は狩猟採集民よりも一般に困難で、満足度の低い生活を余儀なくされていた。狩猟採集民は、もっと刺激的で多様な時間を送り、飢えや病気の危険が小さかった。人類は農業革命によって、手に入る食糧の総量を確かに増やすことができたが、食糧の増加は、より良い食生活や、より長い余暇には結びつかなかった。むしろ、人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながった。平均的な農耕民は、平均的な狩猟採集民よりも苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は劣っていた。農業革命は、史上最大の詐欺だったのだ。
(第2部 農業革命 p107)
人類史の意外な一面を見つけることができる面白い本です。
私は今起きている社会の変化が、自分個人にとって良いものか考えさせられる機会になりました。
上下巻と物量は多いですが、それだけに読みごたえもあるおすすめできる本だと思います。
ご一読ありがとうございます。