概要
タイトル:脱税の世界史
著者:大村大次郎
元国税調査官の筆者が歴史上での脱税の数々を解説しています。
本書は、「脱税」を通じて世界史をたどってみるというテーマを持っています。
脱税というと、なるべく税金を低くしたがために細工をするというのが、一般的な「脱税」のイメージでしょう。確かに、古今東西でこのパターンは一番多いです。
が、それだけでなく、圧政、重税に対する抵抗として、民衆が結託して、課税逃れに走るという場合もあります。また富裕層や貴族などが特権を活用し合法的に税を逃れるということもあります。
いずれにしろ、脱税がはびこるときには、社会は大きな変動が起きます。
武装蜂起、革命、国家崩壊などには、必ずといっていいほど、「脱税」と「税システムの機能不全」が絡んでいるのです。
(中略)
本書を鵜読み終えたとき、おそらくあなたは「世界史の謎」を解いたような気分になるはずです。
(はじめに p4~5)
構成
はじめに ~国家とは税金である~
第2章 秦の始皇帝を悩ませた高度な脱税
第3章 脱税で崩壊したローマ帝国
第5章 ヨーロッパ国王たちによる協会税の脱税
第6章 大航海時代は関税を逃れるために始まった
第7章 ヨーロッパ市民革命は脱税から始まった
第8章 脱税業者が起こしたアメリカ独立戦争
第10章 ヒトラーの「逃税術」と「徴税術」
第11章 ビートルズ解散の原因は税金だった?
第13章 プーチン大統領は脱税摘発で国民の支持を得た
第14章 「中国版タックスヘイブン」の甘い罠
第15章 GAFAの逃税スキーム
第11章 ビートルズ解散の原因は税金だった?
あとがき
参考文献
感想
古代ギリシャ・エジプトからGAFAまで歴史上の脱税について解説されています。
教科書で習ったような歴史上の出来事が、よく見てみるとこれが脱税かと気づくことが出来るのが面白いところです。
歴史上「徴税請負人」という国家から税の徴収を請負う権利を委託された人が、私腹を肥やすために税をとりすぎるというパターンが多くみられています。
エジプトなど中央集権の国家を作れていた国でも最終的には腐敗が起こってい待っていたようです。
本書でたどってきたように、国家が衰退するときというのは、税金が大きく関係しています。
富裕層や特権階級がうまく税を逃れ、そのしわよせが庶民に襲い掛かる、貧富の格差が拡大し民の生活は苦しくなり国力が減退する、そして他国から侵略されたり国が崩壊したりするのです。
(あとがき p298)
近現代になると相続税で衰退したロスチャイルド家やパナマ文書などについてどんなスキームか解説しています。
歴史を税金の徴収という視点から見て楽しむことができますのでお勧めです。
ご一読ありがとうございます。